文字いろいろ


葉翠書道教室(TOP)   翠徳の部屋  ブログ


 

 漢字は中国の殷墟から発掘された甲骨文にはじまり、中国の先人により実用面あるいは美的感覚により篆書、隷書、草書、行書、楷書と書体が変化してきました。

一方、4世紀後半の弥生時代に文字を持っていなかった日本は万葉集で声の表記に中国から伝来した漢字を使い始め、8世紀末の平安時代には草書体を日本独自に変化させた平仮名が確立しました。その後9世紀初めには漢文を和読するための記号的な片仮名が用いられていきます。さて、字を習うにあたり、中国には手本にすべき古典が数多くあります。その中でも有名な古典を中心にどんなすばらしい字体があるのか見ていきましょう。

九成宮醴泉銘(楷書)貞観6(632)欧陽訽の書。陜西省麟游県博物館に現存。唐の太宗が九成宮に避暑した時、たまたま醴泉(甘泉)が湧き出たことを帝室の徳とし、建立された碑。文字の形は細長く、字の中に空間があり、外向きには開放的です。左は抑制し右へは開放、左右は背勢を作り、また上部は狭く下部は広くなっています。気脈流麗で、とても品格のある書です。

 

 蘭亭序(行書)永和9(353)王羲之の書。太宗皇帝が自らの陵墓に副葬したため真蹟は現存していません。下記は馮承素の臨模といわれる八柱第三本(神龍半印本)で北京故宮博物院の所蔵です。王羲之が名士や一族を蘭亭に招き曲水の宴を開いたときに作られた詩27編(蘭亭集)の序文です。用筆は中鋒を主とし、中には側筆も見られる。繊細でしなやかな線と次の線への関連性が良く、ハネや点画が極めて自然です。全体の構成は不思議と乱れていますが、スマートさと流麗さを備えています。

 

 十七帖(草書)東晋 王羲之(303361)の書。真蹟は存在しておらず、下記は古拓館本です。王羲之が晩年に友人に宛てた29帖の手紙で、巻首が「十七日…」で始まることから十七帖と言われています。普通は切り離さない一字内の点画を、明確に別けて書く「断筆」が特徴です。字のバランスがよく、左右の調和がとれ、闊達にして純朴な書です。書聖王羲之の草書の代表作として古くから最上の範本とされています。

 

 石鼓文(篆書)春秋戦国(紀元前374)に刻されたとされている最古の刻石です。これも、北京故宮博物院の所蔵です。60センチほどの太鼓の形をした石10個に、四言詩で狩に関することや、雨、魚、祈りなどについて「大篆」という書体で刻されています。大篆は小篆より先にできた秦国の篆書体です。「蔵鋒」や「中鋒」の筆法が用いられ、左右も対象ではなくバランスがとれています。